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工業での「塗布する」という言葉の意味について

工業での塗布

普段の生活で使われている軟膏やクリームなどの説明書を見ると「患部に塗布する」という記載を目にされることがあるかと思います。
意味合いとしては「不調がある体の一部に塗り付ける」ことになります。
一方、工業でも「塗布」という単語は使われていますが、普段使われている「塗布」とは意味合いが異なります。
今回は、工業で使われている「塗布する」についての説明や仕組み、塗布の一例についてご紹介します。

工業での「塗布」の意味は?

塗布するとは

工業での塗布とは、簡潔に説明すると「濡れ」と「固化」を利用した技術のことです。
主に隙間をふさぐ目的で使用されるシール剤や、防錆・つや出し・着色などで使用される塗料、カメラやスマートフォンなどの基板付近で使用される防湿剤など、さまざまな性質をもった液体でターゲット(吐出の対象先)を濡らし、その液体が固化することでターゲットに新たな機能が付加されます。
ディスペンサによる塗布が行われている業界は自動車をはじめ、電子部品、家電、住宅建材、航空機器など多岐にわたり、行われる主な塗布の方法はシーリング、吐出対象先を回転させる回転塗布、基板などへの樹脂材料によるコーティング、多連ノズルによるラーメン塗布(シャワー塗布)などがあります。
なお、塗布に使用する液体は、用途や目的によって検討します。
工業用の液体は進化を続けており、新たな機能が追加されることがありますので、今後より多くの用途・目的での塗布で使用されることが考えられます。
以下、塗布の仕組みと工業での塗布の例をご説明いたします。

塗布の仕組み

接合したい物に液体を塗布することで、物同士を接合することができます。
接合時に塗布する液体には、空気中の水分や熱で硬化するものや、熱が冷めることで硬化する物があります。
さまざまな物があるため、接着する物によって塗布する液体を選ぶ必要があります。
接合の種類には機械的結合、物理的相互作用、化学的相互作用などが挙げられます。
こちらでは、それぞれの結合・作用についてご説明します。

機械的結合

結合対象AとBの表面にある凸凹面に液体が入りこみ、硬化することによって結合する作用です。
木材や繊維、皮革などの自然界の材料のように、吸い込む性質を持つ材料の接着にも有効で、金属同士の接着などでこちらの機械的結合が用いられることが多いです。

物理的相互作用

分子間に働く引力であるファンデルワールス力(分子間力)による接着です。
接着剤と接着対象の距離が非常に近づいた際に働く作用で、接着剤の基本原理です。
いわゆる表面張力もこの物理的相互作用によるもので、コップに水をあふれるほど入れてもこぼれないなど、日常生活でもこの作用はよく目にすることがあるかと思います。

化学的相互作用

接着剤と接着対象が原子同士で互いに持っている電子を共有する、化学結合の作用による接着方法です。
化学結合には主に@共有結合、Aイオン結合、B金属結合の3種類があり、結合の強さは@→A→Bの順です。結合が強いと、熱などの外的衝撃にも強く原子間の結合がはがれにくいため、接着面もはがれにくくなります。

ちなみに化学結合とファンデルワールス力による結合については、融点・沸点の高さから結合の強さを比較することができます。
融点は固体から液体に変わる時の温度で、沸点は液体から気体に変わる時の温度を差しています。つまり、両方とも結合が切られる時の温度であるため、結合が強いほど融点・沸点が高いと言えます。
化学結合は融点・沸点が高く、ファンデルワールス力による結合は融点・沸点が低いため、結合の強さは化学結合の方が強く、ファンデルワールス力による結合の方が弱いことが分かります。

工業での塗布の例

塗布の目的

塗布とは何か、塗布の仕組みについてご理解いただいたところで、工業での塗布の例をご紹介いたします。

車のコーティング

皆様の身近にある車にも塗布が行われています。
例えば、基板の防湿のためのコーティング、エアエレメントへの回転塗布などが挙げられます。
車は精密機器の集合体であるため、高精度な吐出を行えるディスペンサが、多くの製造工場で使用されています。

小型部品の接着

電子部品の製造において、小型部品の接着は手作業ではあまりにも細かな作業になる場合があります。
そのような場合、人為的ミスや工数過多による作業の遅れなどが生じることを防ぐため、ディスペンサが高精度な計量や定量吐出をし、塗布を行います。
このように、手作業で行うと膨大な時間や工数がかかる作業にディスペンサを用いることで、正確かつスムーズに作業を進めることができ、作業時間の短縮や人件費などのコスト削減に貢献します。

おわりに

今回は工業での塗布についてご説明しました。
工業での塗布とは、「濡れ」と「固化」を利用した技術のことです。ターゲット(吐出の対象先)を液体で濡らし、その液体が固まることにより、接着などの新たな機能が付与されます。
塗布が行われている業界は自動車、電子部品、家電、住宅建材、航空機器など多岐にわたり、また塗布にはシーリング、回転塗布などさまざまな塗布方法の種類があります。
ターゲットに液体を塗布し、コーティングや接着などの新たな機能が付加された場合は、結合や相互作用がうまく働いているという証拠です。
液体とターゲット(吐出の対象先)の性質を理解し、作業に適したディスペンサを使用することで、手作業よりも正確かつスムーズに塗布の作業を進めることができます。
「この塗布作業、改善ができないか」とお困りでしたら、ぜひ当社にご相談ください。