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用語解説 Vol.1:ディスペンサと周辺機器

ディスペンサ

ディスペンサとは液体を正確に計量し、ターゲット(吐出の対象先)へ高精度に液体を吐出する装置です。
ディスペンサを使用することで正確に液体を計量するだけではなく、2液(主剤・硬化剤)の場合は混合比率通りに計量したそれぞれの液体を均一に混合することや、ばらつきが少ない吐出など、手作業よりも精密で素早く作業ができることから、作業にかかる手間や時間を削減できるため、ディスペンサを導入するメリットは主に業務の効率化が挙げられます。
そのため、ディスペンサは自動車・家電などの部品やディスプレイ・半導体などの精密機器の接着など、さまざまな塗布作業で使用されています。
また、手作業で塗布を行うことが困難な小型部品などに、ディスペンサで塗布作業を高精度に行うことで、手作業よりクオリティが高くなることもメリットの1つです。

ディスペンサのシステムは、計量を行うポンプ、吐出量や吐出タイミングなどの制御を行うコントローラを中核とし、周辺機器にはノズル、ミキサ、液体吐出バルブ、圧力タンクなどがあり、ターゲットや使用する液体によって必要となるシステムの構成が異なります。
吐出する液体はターゲットや用途によりさまざまで、可動部分の作動を潤滑にするため使用するグリス、部品の接着に使用する接着剤、基板の封止に使用するアンダーフィルなどが挙げられます。

ディスペンサには後述するエアシリンジ方式、チュービング方式、容積計量方式など、さまざまな吐出方法があります。

● エアシリンジ方式 … 主に吐出対象である液体を入れるシリンジのほかに、レギュレータ・開放弁・制御機器などによって構成されており、シリンジの中の液体を空気圧で押し出す時間により吐出量を制御しています。
設定した値に吐出量が達する時、制御機器によって弁を閉じることで吐出を止めます。

● チュービング方式 … 主に液体を送り出すチューブのほかに、チューブポンプが取り付けられた制御機器などによって構成されています。
ポンプ内にあるローターの周囲に取り付けたチューブを、ローターが回転しながら圧力をかけていき、その圧力でチューブが液体の吸い込みと押し出しを繰り返すことで、吐出部まで安定して液体を送り出し、吐出します。

● 容積計量方式 … 主に液流路内に設けた計量室内でピストンが押し出した体積分の液量を吐出する方式で、ピストンの径とピストンが動いた距離(ストローク)で、液体の吐出量が決まります。
ピストンの径とストロークによる体積で、吐出に必要な液量を確保するため、液粘度変化による吐出量のばらつきが少ない計量精度の高さが特徴です。
そのため、低粘度から高粘度までの幅広い粘度の液体を、正確に吐出することができます。

ポンプ

一般的にポンプとは、圧力によって液体や気体を押し出す部品を指しますが、ディスペンサの場合は押し出す液体を計量する機能も担っています。
ポンプを構成する要素の一例として、液体を正確に計量する計量部、液体の流れを制御する切換弁やチェック弁などが挙げられます。
2液型ディスペンサの場合、主剤と硬化剤を混合比率どおり正確に計量できるよう、主剤と硬化剤をそれぞれ計量するポンプが取り付けられています。

容積計量方式のポンプは、主に「プランジャポンプ」、「ポジロードポンプ」、「スクリューポンプ」があります。

● プランジャポンプ … プランジャによって液体を押し出して吐出する方式です。
IN切換弁が開くことで液体がタンクから計量室へ流入され、IN切換弁が閉じてOUT切替弁が開くタイミングで、プランジャが計量室内の液体を押し出すことで吐出されます。
極微少量でも高精度に吐出できることが特徴です。

● ポジロードポンプ … 液流路内に設けた計量室内でピストンが押し出した体積分の液量を吐出する方式です。
ピストンの径とストロークの体積により、吐出に必要な液量を確保するため、液粘度変化による吐出量のばらつきが少ない計量精度の高さが特徴です。
そのため、低粘度から高粘度の液体まで幅広く対応が可能です。

● スクリューポンプ … 計量部がロータとステータからなる回転式変位ポンプと呼ばれるもので、ロータが回転するとステータ内で往復運動が行われ、ポンプ室に充填された液体を無限のピストン運動による無脈動で連続して定量吐出する方式です。

圧力タンク

圧力タンクとは液体を入れるだけではなく、タンク内にエア圧をかけることで液体を送り出すことが可能なタンクです。
入れることができる液体の量はタンクによってさまざまで、作業内容などにより容量を選びます。

主に圧力タンクは金属でできており、タンク内の残量を容易に確認することができないため、圧力タンクによっては接触式のレベルスイッチをタンク内に取り付けることや、液量ゲージを外側に取り付けることで、液体の残量を確認できる仕様もあります。
また、圧力タンクによっては液体内のフィラー沈降防止などのために攪拌機を取り付けている仕様もあり、作業内容により適したタンクを選ぶ必要があります。

圧力タンクは、主に「上部圧送式」と「下部圧送式」があります。

● 上部圧送式 … タンクの上部から液体が送られる様式のタンクです。
タンク台は必要無く、タンクの蓋にパイプが付けられており、エア圧で押し上げられた液はパイプを通して上部から出てきます。
上部圧送式に使用することができる液体は低・中粘度の液体です。高粘度の液体はタンク底部に液体がたまると、エア圧で押し上げることができないため使用できません。

● 下部圧送式 … タンクの下部から液体が送られる様式のタンクです。
タンク底部に液体を送るパイプが取り付けられているため、高さを付けるためのタンク台を併用し、液体はタンク上部からのエア圧によりタンク底部の出口から出てきます。
下部圧送式に使用することができる液体は低粘度から高粘度まで、さまざまな粘度の液体を使用できます。

ミキサ

ミキサとは、混合比率通りに計量した異なる原材料の液体(主剤・硬化剤)を均一に混合するために使用する部品を指します。

ディスペンサで使用するミキサには、主に「スタティックミキサ」と「ダイナミックミキサ」があります。

● スタティックミキサ … 管の中に液体を混合するエレメントが取り付けられ、エアや電気などの動力源を使わず、2種類の液をエレメントにより分割して混合するシンプルな構造のミキサです。
エレメントを回転させる駆動部が無いことから、スタティック(静的)という意味を持ちます。
スタティックミキサ内のエレメントは板がねじれた形状で、ねじれの向きによって右エレメントと左エレメントがあります。
そのねじれの流れに沿って、液体が分割と転換と反転を繰り返すことにより均等に混合される仕組みです。
使い捨てタイプのため、メンテナンスが不要です。

● ダイナミックミキサ … 1本のシャフトにチャンバーブレードが複数取り付けられ、そのシャフトが回転することによって液体を攪拌するミキサです。
回転数を調整することで、さまざまな混合条件に対応することができます。
混合する液体同士の比重や粘度が異なっても、スタティックミキサと違いほとんどの液体を混合することができ、2液だけではなく複数の液体の混合も可能です。
なお、混合後に液体を放置してしまった場合など、可使時間が過ぎると液体がミキサ内で硬化してしまうため、清掃やメンテナンスが必要になります。

液体吐出バルブ

液体吐出バルブとは、さまざまな作業にあわせて低粘度から高粘度までのあらゆる粘度の液体を流したり、止めたり、流れる液量を制御する部品です。
適応する液体は、1液性樹脂はもちろん、2液性樹脂の使用も可能です。

液体吐出バルブは、主に「ドージングバルブ」と「フローバルブ」があります。

● ドージングバルブ … テーパー面をもつニードルが液の経路(孔)を押さえてシールし、ノズルから液ダレを防ぎます。
1液・2液性樹脂、嫌気性樹脂などの用途に最適です。

● フローバルブ … ドージングバルブとは全く反対の動作でニードルを引き上げてシールします。そのためノズル先端の液は引き込まれる状態になります。
オリフィス径が大きいため多量の吐出作業の場合に最適です。

バルブに取り付けるノズルや機器などによって、さまざまな吐出を行うことができます。たとえば広い範囲に液体を吐出する際はスプレーノズル、一度に同じ量を複数箇所に吐出する際は多連ノズル、手作業でターゲットに吐出する際は手元スイッチを押すことで吐出可能なガンタイプの機器などがあります。

ノズル

ノズルとは、吐出時の液体が流れる方向や液体の流速・流量、線状や帯状などの吐出形状(パターン)を定めるための部品を指します。
先端の形状にはさまざまな種類があり、直線状のものだけではなくターゲット側面に塗布するための曲げノズル(カーブノズル)、一度に複数箇所へ吐出するための多連ノズル、帯状に吐出するための平ノズルなどがあります。

塗布する液体の中には、金属に触れると硬化してしまう嫌気性の樹脂や、高温の場合があるため、使用する液体によってプラスチックや金属などさまざまな素材のノズルを使い分ける必要があり、ノズルを選ぶ際には、液体を塗布する部分の寸法、ノズルの長さ、ニードルやボス部の素材などの要素から選びます。

なお、液体を塗布する際の重要な周辺機器のひとつであり、ノズルに変形がある場合やノズル内に不純物が残っている場合、正しい液量や正しい形状でターゲットに吐出できない可能性があるため、取り扱いには十分注意しなければなりません。
また、液体を吐出する際にかかる圧力によって、ノズルがディスペンサから外れないように取付け時の注意も必要です。