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用語解説 Vol.2:計量ポンプの種類・塗布の方法

計量ポンプ(容積計量方式)の種類

ポジロードポンプ

ポジロードポンプとは、液流路内に設けた計量室内でピストンが押し出した体積分の液量を吐出する方式です。
ポジロードポンプは液体を吐出するピストン、液体の逆流を防止するチェック弁などで構成されており、タンクの下に計量部を取り付けたシンプルな構造で、液体はタンクから直接計量ポンプに送られ、正確に計量吐出されます。

液体を吐出するまでの具体的な動きは下記の通りです。

ポジロードポンプ

1. 吐出前

原点よりピストンが動き始めた状態です。
この時、液体の流れを制御するチェック弁は閉じています。

2. 吐出開始

ピストンが計量チューブ内に入り、計量・吐出を開始する状態です。
開始すると同時にチェック弁が開き、液体を吐出し始めます。

3. 吐出終了

ピストンがあらかじめセットされた吐出量の液体を出し終わった状態です。
終了と同時にチェック弁が閉じ、吐出を停止します。

4. 吐出終了後

ピストンが計量チューブ内から出て原点に戻り始めます。
この時、計量チューブ内に真空が発生し、タンクより新しい液体を計量チューブ内に引き込みます。

5. 原点復帰

ピストンが完全に原点に復帰した状態となり、新しい液体が補充されます。

プランジャポンプ

プランジャポンプとは、計量室内のプランジャが押し出した体積分の液量を吐出する方式で、プランジャの往復運動により計量室の容積を変化させ、液体の吐出と吸い込みを繰り返し行います。
プランジャポンプは液体を押し出すプランジャ、液体の流れを制御する切換弁などで構成されています。
プランジャポンプ式のディスペンサは、設備として設置するほど大きなものや手で持ち運べるサイズのものなどさまざまです。

液体を吐出するまでの動きは下記の通りです。

ポジロードポンプ

1. 吐出前

IN切換弁が開くことで液体がタンクから計量室へ流入され、吐出信号と同時にIN切換弁が閉じる事で、加圧タンクからの液体の流入を止めます。

2. 吐出中

吐出信号と同時にOUT切換弁が開き、プランジャが計量室内の液体を押し出すことで吐出部へ液体が送られ、吐出されます。

3. 吐出後

OUT切換弁が閉じ、それと同時にIN切換弁が開きます。
その後はプランジャが原点の位置に戻り、再び液体が加圧タンクから計量室へ流入されるという流れを繰り返し行います。

計量・吐出が似ている方式のポンプに「ピストンポンプ」があります。
ピストンポンプもピストンが往復運動することにより液体の吸い込みと吐出を繰り返し行うもので、その方式は井戸や灯油ポンプにも用いられています。

ピストンポンプとプランジャポンプの主な違いは下記の通りです。

【ロッドの構造】

・ピストンポンプ:ピストンのロッドが短く、直径が大きい構造。

・プランジャポンプ:プランジャのロッドが長く、直径が小さい構造。

【シール機構】※液体を密閉するための機構

・ピストンポンプ:ピストン側にシール機構がある

・プランジャポンプ:本体側にシール機構がある

プランジャポンプは上記の構造から高圧が得られるため、吐出量の調整が容易な点が特徴です。

スクリューポンプ

スクリューポンプとは、計量部がロータとステータからなる回転式変位ポンプと呼ばれるもので、ロータの回転運動により液体を吐出部まで送り出す方式です。
液体の粘度や温度変化に左右されず、低粘度から高粘度までさまざまな液体を正確に計量できます。

回転部の役割である丸ねじ形状のロータが、固定部のステータ内で回転することによって、ロータとステータの間にポンプ室が形成されます。ロータが回転を続けることで、ステータ内で無限のピストン運動が行われ、無脈動でポンプ室内の液体が連続定量吐出され、高精度な線引き塗布を実現します。

また、液体の吐出量や吐出時の線引きの太さはロータの回転速度により調整が可能で、ロータが高速で回転するほど単位時間当たりの吐出量が増加します。

吐出後、ロータの運動を逆転させる吸い戻し(サックバック)機能により、ノズル内の吸い戻しを行うことでノズル先端部の液だれを防止し、きれいな吐出を実現します。

塗布の方法

回転塗布

回転塗布とは、液体を吐出するノズルを固定し、ターゲット(吐出対象先)を回転させることで液体を円周塗布する方法です。
平面への塗布やターゲットが円筒状の場合は内周や外周に塗布することができます。

ターゲットに塗布する液量はディスペンサからの吐出量や、ターゲットの回転速度などで調整することができます。

また、回転塗布と似た言葉に「スピンコータ」もしくは「スピナー」がありますが、こちらは液体をターゲット(吐出対象先)の中央に吐出し、そのターゲットを高速回転させることで発生する遠心力により、ターゲットの表面全体に液体を広げる塗布方法です。
スピンコータ・スピナーは少量の液体でも吐出した表面全体に液体を広げることができる一方、液体の粘度やターゲットの状態によっては表面にムラが出ることもあります。

コーティング

コーティングとは、ターゲット(吐出対象先)の表面に保護膜となる液体を塗布することです。
一般的な事例では車のコーティングが挙げられますが、ディスペンサの用途には主にスマートフォンやパソコンなどに使用される基板や電子部品へのコーティング等があります。

コーティング剤の種類にはアクリル系やオレフィン系、ウレタン系などがあり、種類によってコーティングの強さや膜の厚さが異なるため、塗布するターゲットに合わせて使い分ける必要があります。

コーティングを行う目的はほこりや水分からの保護や衝撃によるずれの防止で、電子部品を保護するために塗布される防湿コーティングのことをコンフォーマルコーティングと言います。
コンフォーマルコーティングの吐出方法は下記のスプレー方式やフィルムコート方式、ニードル方式、ジェット方式などがあります。
それぞれメリット・デメリットがあるため、用途にあわせてノズル・バルブを選びましょう。

● スプレー方式
液体を霧状に噴射するため、高さがある部品の幅広い面への塗布などさまざまな形状に対応可能ですが、液体を付着させたくない箇所にはマスキングを行うなどの対策が必要です。

● フィルムコート方式
高速で幅広いフィルム状(帯状)に塗布ができますが、高粘度の液体を取り扱うことができません。

● ニードル方式
微少量の吐出が特長であり、細長い線引き塗布やピンポイントな箇所への塗布が可能ですが、液だれや液もれには注意が必要です。

● ジェット方式
ターゲット(吐出対象先)から離れているノズルより、ターゲットに向けて液滴を飛ばすことで塗布する方式で、非接触による吐出のため凸凹した箇所や狭い箇所への塗布が可能ですが、広いエリアへの吐出には適していません。

ポッティング

ポッティングとは、透明なポリウレタン樹脂を吐出し、表面の膜が少し盛り上がった分厚いシールを作成するための吐出作業が一般的な事例ですが、ディスペンサの用途では電子機器などの小型モジュールの固定・保護などを目的とした液体の注入作業が挙げられます。

ポッティングに使用する主な樹脂はシリコーン、エポキシ、ウレタンなどがあり、ポッティングを行うメリットは下記の通りです。

● 樹脂が吐出箇所を固定するため、振動や衝撃に強い。

● 硬化した樹脂がほこりや汚れの付着を防ぐ。

● 硬化した樹脂が耐水化するため、防水・防湿の効果がある。