INFORMATION
ディスペンサのナカリキッドコントロールTOP > Information > 13 - 用語解説 Vol.3:液体の性質

用語解説 Vol.3:液体の性質

粘度

液体における粘度とは、サラサラさ、ドロドロさといった粘り度合いを表す数値で、粘度が低いとサラサラと流れやすく、粘度が高いとドロドロと流れにくくなります。
粘度の単位は、国際単位系(SI)でPa・s(パスカル・秒)と表します。

液体を熱したり冷やしたりすると、粘度は温度変化と共に変化します。
粘度と温度を表す数式として、アンドレードの式が一般的で、下記のように表します。

アンドレードの式
アンドレードの式
η : 粘度
T : 温度
a・b : 材料固有の係数
exp : 指数

こちらの数式でご覧いただきたい箇所は、粘度を表すηと温度を表すTです。
アンドレードの式には定数や係数などの要素が含まれますが、ご覧の通り液体の温度が分数の分母の箇所にあります。
式にあてはめて計算すると、分母である液体の温度が高くあればあるほど、導き出される粘度は低い数値になります。
つまり、アンドレードの式では温度が高いと粘度が低いという関係が表されています。

なお、粘度によって使用可能なディスペンサが異なるため、吐出する液体の粘度を参考にディスペンサを選定します。
液体の粘度に関するディスペンサ使用時の注意点として、タンクに入れた時の液体の温度と吐出する時の液体の温度の違いが挙げられます。
液体がディスペンサ内で流れていくにつれて温度が低くなると、タンクに入れた時よりも粘度が高くなり、液体が吐出されにくくなる場合があります。
粘度の変化を防止するためには、タンクに入れてから吐出するまで液体の温度を一定に保つ必要があり、その対策としてタンク・ポンプ・ホース・ミキサ・バルブなどの部品にヒーターを取り付けることで、液体はディスペンサ内で温度を保つことができます。これにより、粘度が高くなることなく吐出されやすい状態を保ちます。

また、吐出部の口径が大きいノズルで低粘度の液体を吐出すると液だれや液もれが発生することや、口径が小さいノズルで高粘度の液体を吐出すると時間がかかる場合やそもそも吐出ができないことがあるため、使用する液体の粘度に適した口径のノズルを選ばなければなりません。

気泡

気泡とは、空気やガスなどの気体が液体内に閉じ込められることでできる泡のことです。
接着剤など工業で使用する液体にはさまざまな化合物が混合しているため、気泡が含まれる場合があります。

気泡のサイズはさまざまで、通常であれば炭酸水のように液体内に気体があれば気泡として視認することができますが、マイクロバブルやナノバブルのように、視認しにくい(できない)気泡もあります。

液体に気泡が含まれる原因は以下の通りです。

・運搬時や製造段階で気体が液体に含まれてしまう

・凍結していた液体を解凍したとき

・シリンジやタンクに詰め替えるとき

ディスペンサの吐出時に気泡があることによる主な問題点は、不安定に液体が吐出される点が挙げられます。安定した液体の吐出のためにも、液体の脱泡作業は必ず行うようにしましょう。
脱泡の方法には、攪拌脱泡機などの装置の使用、加熱による脱泡、超音波などを利用して高速で液体を振動することによる脱泡などがあります。

また液体吐出時に気泡が発生する場合もあり、吐出スピードが速い時に発生する場合はスピードを遅くしたり、ノズルとターゲット(吐出対象物)の距離が離れている時に発生する場合は距離を短縮したりすることで、気泡の発生を抑えることが可能です。

硬化

硬化とは、物が硬くなることを指します。
硬化の例としては、さまざまな状況で使用する接着剤が挙げられます。塗布前は液体である接着剤が、塗布後は時間経過や化学反応によって硬化することで、接着の効果が生まれます。

接着剤などの樹脂は下記のように、さまざまな方法で硬化します。

●溶剤揮散型

有機溶剤が蒸発することで、残った樹脂が硬化します。

●湿気硬化型

瞬間接着剤などのように、空気中に含まれる水分と反応して硬化します。

●加熱硬化型

熱を加えることで、樹脂中の硬化剤の成分が活性化して硬化します。

●硬化剤混合型

主剤と硬化剤を混合することで硬化します。

●嫌気硬化型

酸素を遮断し、金属と接触することで硬化します。
金属同士の接着に使用する樹脂の硬化方法です。

●紫外線硬化型

UV(紫外線)が照射されることで硬化します。
主にガラスやプラスチックの接着などで使用されます。

硬化する性質を持つ樹脂を使用する際には、下記のように液体の性質に合ったディスペンサの構成が必要です。

● 嫌気性接着剤は金属に触れると硬化するため、シリンジやノズル、チューブといった液体が触れる箇所はプラスチックなど金属以外の部品で構成します。

● 紫外線硬化型の場合は、ディスペンサ内の樹脂が吐出されるまで光に当たらないように構成する必要があります。

ポットライフ

ポットライフとは、2液型の樹脂(主剤・硬化剤)を混合した後の使用可能な最長の時間のことで、日本語では「可使時間」といいます。
高温になるほど化学反応が速くなるため、ポットライフは短くなります。
樹脂が硬化すると吐出や接着などの作業ができなくなるため、硬化する前に作業を行わなければなりません。

ポットライフは主に商品(樹脂)のカタログや仕様書などに書いていますが、記載が無い場合は樹脂メーカーに問い合わせましょう。
例えば、「可使時間8時間(20℃)」と書かれている場合、「樹脂の温度が20℃の場合、最長8時間は使用可能」という内容であり、その時間の評価方法として一部の樹脂メーカーは「粘度が混合時の2倍になる時間」と定めています。

前述の通り、樹脂の温度と可使時間には相関関係があるため、少し長く作業をしたい場合は樹脂の温度を下げたり、早期に作業を終わらせたい場合は温度を上げたりといった調整を、作業に支障が無い範囲で行います。
なお、可使時間の調整をするために、樹脂メーカーが指定していない比率で混合・使用してはいけません。
主剤と硬化剤が正しく化学反応しないだけでなく、樹脂が使用できなくなるため、正しい比率で混合する必要があります。

モノマー

モノマーとは分子量の小さい分子であり、日本語では「単量体」といいます。
モノマーの「モノ」とは「ひとつの」「単体の」という意味を持つギリシャ語の接頭語で、モノマーが2つ結合したものをダイマー、3つ結合したものをトリマー、4つ結合したものをテトラマー、10〜100個が結合したものをオリゴマー、数千〜数万個が結合したものをポリマー(重合体)といいます。

なお、モノマーの種類にはエチレンやプロピレンなどがあり、重合することでエチレンがポリエチレン、プロピレンがポリプロピレンというポリマーになることから、モノマーはポリマーを構成する原料のことも指しています。このように、モノマーが重合してポリマーになることでプラスチック(樹脂)が成形されます。

ポリマー

ポリマーとは、前述の通り単量体であるモノマーが数千〜数万個集まり結合することで形成される大きな分子であり、日本語では「重合体」といいます。
なお、同じモノマーが集まり結合してポリマーになる化学反応のことを重合反応といいます。
ポリマーの「ポリ」とは「複数の」「たくさんの」という意味をもつギリシャ語の接頭語です。

ポリマーの例としては、ペットボトルの原料であるPET(正式名称「ポリエチレンテレフタレート」)やポリエチレンなどのプラスチック、タンパク質(アミノ酸のポリマー)などがあります。

前述の通り、モノマーが重合してポリマーになることでプラスチックが成形されますが、モノマーが重合したのみの性質では実際の使用環境に耐えられない場合が多いため、ポリエチレンやポリエチレンテレフタレートなど多くのプラスチックは、性質の強化などを行うために添加剤をモノマー重合後のポリマーに加えることで人工的に作られる合成樹脂です。

また、合成樹脂の他に人工的に作られるポリマーには合成ゴムもあり、エチレン、プロピレン、ブタジエンなどのモノマーと溶剤を混合し、重合開始剤を投入して重合させることで作られます。
ゴムは軽量かつ衝撃に強い性質があり、変形してもすぐに元の形に戻るなど形状変化に強い性質を持ちます。また、電気を通さないことから絶縁体として使うことができます。

ポリマーは金属やセラミックスに比べて加工がしやすく軽量ですが、熱に弱く、温度が高くなると劣化する場合があります。