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用語解説 Vol.7:ディスペンサで使用する樹脂などの機能や性質

接着

接着とは、物理的もしくは化学的な力またはその両者によって二つの面が結合した状態のことです。
その物理的もしくは化学的な力には、機械的結合、物理的相互作用、化学的相互作用などがあります。

●機械的結合

結合対象AとBの表面にある凸凹面に液体が入りこみ、硬化することによって結合する作用です。
木材や繊維、皮革などの自然界の材料のように、吸い込む性質を持つ材料の接着にも有効で、金属同士の接着などでこちらの機械的結合が用いられることが多いです。

●物理的相互作用

分子間に働く引力であるファンデルワールス力(分子間力)による接着です。
接着剤と接着対象の距離が非常に近づいた際に働く作用で、接着剤の基本原理です。
いわゆる表面張力もこの物理的相互作用によるもので、コップに水をあふれるほど入れてもこぼれないなど、日常生活でもこの作用はよく目にすることがあるかと思います。

●化学的相互作用

接着剤と接着対象が原子同士で互いに持っている電子を共有する、化学結合の作用による接着方法です。
化学結合には主に@共有結合、Aイオン結合、B金属結合の3種類があり、結合の強さは@→A→Bの順です。結合が強いと、熱などの外的衝撃にも強く原子間の結合がはがれにくいため、接着面もはがれにくくなります。

接着の用途で主に使用されている接着剤は、「機械的結合」「物理的相互作用」「化学的相互作用」の要素が複合的に働くことで接着します。

また、接着剤は液状もしくは液状に近い流動状態で、接着対象に濡らした接着剤が固まることにより接着します。
接着対象をしっかり接着するためには、接着剤がなじむように対象の表面を均一に濡らすことが重要で、濡れの角度(接触角)が小さいほどしっかり接着します。接触角が小さいということは、接着剤と接着対象の距離が非常に近づいている状態であり、ファンデルワールス力(分子間力)が生じます。

潤滑性

潤滑性とは、物体同士の摩擦を低減させ、それぞれの物体の運動を滑らかにする性質のことです。なお、摩擦とは物体同士が接触して相対的に運動する時に、その接触面で運動を妨げようとする方向に力が働く現象のことです。

潤滑性が向上して摩擦抵抗が減ることにより、以下の効果を期待することができます。

・摩耗防止:摩擦面のすり減りを防ぐことができます。

・焼き付きの防止:摩擦によって発生する熱による焼き付きを防ぐことができます。

・騒音や振動の抑止:摩擦によって発生する音や振動を抑えることができます。

・錆の防止:金属同士の摩擦による錆の発生を防ぐことができます。


潤滑状態は、摩擦形態によって以下のような状態があります。

●固体潤滑

摩擦面の間に流体(潤滑剤)がなく、乾燥した固体同士が摩擦している状態です。

●境界潤滑

摩擦面の間が、潤滑剤によって直接接触していない箇所と、潤滑剤がなく摩擦面同士が接触している箇所がある状態です。
潤滑剤の量が十分でない場合の他に、潤滑剤の粘度が不足している場合にも境界潤滑の状態になることがあります。

●流体潤滑

摩擦面の間に十分な潤滑剤があり、摩擦面同士が分離して接触していない状態です。

境界潤滑や特に固体潤滑では摩擦係数(接触面の滑りにくさを表す数値)が大きいため、摩耗が早くなる場合や発熱によって焼き付きが発生する場合があり、物体の破損につながる恐れがあります。
潤滑性向上の手段として、流体潤滑になる量の潤滑剤を摩擦面に塗布することで、摩擦による破損などを防止できます。

主な潤滑剤の種類であるグリスは、基油に液体の粘性を高める成分を持つ増稠剤(ぞうちょうざい)を混ぜた半固体状潤滑剤で、ベアリングやブッシュなどの潤滑の用途に使用されています。

電気絶縁性

電気絶縁性とは、電気を通しにくい性質のことで、外へ電気が逃げないように電気の流れを遮断する漏電防止などの目的に使用されます。

ポリエチレンやポリプロピレンをはじめとするプラスチックは、基本的に電気絶縁性があるため、電気絶縁性はプラスチックの特長の1つとして挙げられることがあり、プラスチックのように電気絶縁性を持つ物質のことを絶縁体といいます。

塗料や接着剤として使用されているエポキシ樹脂は電気絶縁性に優れており、プリント基板や半導体製品、LED、自動車用電装部品などさまざまな製品に使用されています。

防水性

防水性とは、外部からの水の浸入を防ぐ性質のことです。

水は電気を通しやすいため、電子機器や電子部品が水に濡れたり水没したりすると、濡れた部分から電気が流れることで回路がショートするなどして故障につながる場合があります。
水が原因で起こる故障などのトラブルを防ぐため、電子機器や電子部品において防水は重要です。

雨天の中で運転する場合がある自動車においても防水は重要であり、部品の製造や車体の組み立ての工程で、防水を目的としてシール剤を塗布することがあります。
シール剤とは、合成樹脂や合成ゴムなどが原料のペースト状(のり状)の材料で、防水が求められる隙間や継ぎ目などに塗布して、その箇所を密閉することを目的に使用されています。
シール剤が塗布される主な自動車部品にはエンジン部品やECUなどがあり、車体ではドアの外パネルや車体に取り付けるガラスなどにシール剤を塗布します。

また、水に関する性質には他に撥水性・疎水性などがあり、撥水性とは水を弾く性質のことで、撥水性が付与された箇所についた水は玉状になって弾かれます。
疎水性とは水に混じりにくい性質のことで、疎水性が付与された箇所についた水は膜状にまとまります。

防湿性

防湿性とは、空気や物に含まれている水分である湿気を防ぐ性質のことです。
前述の通り電子機器や電子部品は水が原因で故障する場合があるため、湿気にも気をつける必要があります。

例えば、スマートフォンなどさまざまな電子機器に使用されるプリント回路板(PCB)は、湿気による結露などが原因で回路に不具合が発生して、電子機器の故障につながる場合があります。
また、湿度が高い環境にプリント回路板(PCB)を設置した状態で電圧印加すると、イオン化した金属が電極間を移動しショート(短絡)してしまうイオンマイグレーションという現象が発生する場合もあります。

これらの不具合や現象を防ぐために、高い防湿効果があるフッ素コーティング剤をプリント回路板(PCB)に塗布するなどの対策を行います。このように、電子部品を保護するために塗布される防湿コーティングのことをコンフォーマルコーティングといいます。
また、湿度が高い環境でも使用する自動車やエアコン室外機の基板などにも、防湿の目的でフッ素コーティング剤を塗布することがあります。

なお、電気絶縁・防水・防湿には樹脂のポッティングも効果的です。
ポッティングとは、ディスペンサの用途では電子機器などの小型モジュールの固定・保護などを目的とした液体の注入作業のことで、小型モジュールにポッティングされたシリコーンやエポキシ、ウレタンなどの樹脂が硬化することで電気絶縁・防水・防湿などの効果が発生します。