ディスペンサとは何か?意味や用途、吐出方法を分かりやすく解説

「ディスペンサ」とは、液体やものを定められた量で出す装置を意味する言葉です。
様々な用途に用いられていますが、製造業では「接着」はもちろん、「封止」、「充填」、「線引」など、液体を吐出する作業の際に使用します。
これらの作業をあまり手間・時間をかけずに行うためには、ディスペンサを用いることが一番の近道です。
今回は、ディスペンサとは何か、用途や吐出方法についてご紹介します。
ディスペンサとは何か?【意味・語源】
「ディスペンサ(dispenser)」は、日本語訳では「液体定量吐出装置」となり、一定量の液体を吐出する装置を意味します。
分注や分配を意味する「dispense」を語源とする単語でもあり、14世紀の中世ヨーロッパの貨幣決済の際に、秤を使用して正確に計測して分け与えたことがルーツとされています。
ディスペンサと一口に言ってもその種類は幅広く、キャッシュディスペンサ(ATM) やドリンクディスペンサのほか、家庭用のシャンプーやソープを出す容器などを指すこともあります。
自動車産業や電機・電子産業など、主に製造業で用いられるディスペンサは、接着剤や潤滑剤、放熱材などの液体を正確に決められた量を吐出する装置を指しています。
ディスペンサの主な種類・用途

ディスペンサにはいくつかの種類があり、以下、私たちの身近な場所でも様々な用途で用いられています。
・キャッシュディスペンサ
・ドリンクディスペンサ
・ソープディスペンサ
・シャンプーディスペンサ
・テープディスペンサ
など
また、製造業向けディスペンサの使用シーンとしては、自動車・家電などの部品やディスプレイ・半導体などの精密機器の製造工場などで用いられています。
例えば、自動車のECU(Electronic Control Unit)・パワーモジュール・LED・ルームミラーなどの部品やディスプレイ・半導体では接着・封止・ポッティングなどの液体を塗布する作業でディスペンサが使用されています。
ディスペンサの用途例については、以下の記事でも詳しく解説しています。
また、製造業向けディスペンサの場合、ディスペンサで吐出する液体が1液(単体で使用する液体や硬化剤がすでに混ざっている状態の液体)であれば1液型ディスペンサ、2液(主剤と硬化剤を混合することで性能を発揮する液体)であれば2液型ディスペンサを使用します。
また、3液の液体を計量・混合・吐出する3液型のディスペンサもあります。
用途に適したディスペンサを選ぶには、「吐出量」「吐出する液体に対応可能かどうか」に関して考慮する必要があることを覚えておくと良いでしょう。
ディスペンサの主な吐出方法

こちらでは、主に自動車部品や電子部品の製造工場などで用いられるディスペンサの主な吐出方法について説明します。
エアシリンジ方式
エアシリンジ方式は、主に吐出対象である液体を入れるシリンジのほかに、レギュレータ・開放弁・制御機器などによって構成されており、シリンジの中の液体を空気圧で押し出す時間により吐出量を制御しています。
設定した値に吐出量が達する時、制御機器によって弁を閉じることで吐出を止めます。
【エアシリンジ方式の製品例】
エア圧送式シリンジタイプ DCOP-SC1
コンパクトなボディにシリンジ吐出に必要な基本機能を凝縮した、コストメリットの高い汎用タイプの1液型ディスペンサです。

海外でもそのまま使用できるAC100〜240V対応で、内部トランスを必要としません。
タイムレンジは最小0.001秒から設定でき、微小量吐出や微妙な吐出時間の設定も可能です。
外部入出力端子付きでロボットなどの自動機との連動ができます。
設置スペースをとらず、軽量で持ち運びがしやすいのも特長です。
【仕様】
吐出量範囲 | 0.0005ml/shot 以上 |
---|---|
シリンジ容量 | 55ml・30ml・10ml・5mlより選択 |
電源・消費電力 | AC100V〜240V ・ 25W |
エア源 | 0.5 MPa (ドライエア) |
圧力レンジ | 0.02〜0.49MPa |
タイムレンジ | 0.001 〜 99.999秒 |
動作モード | タイマ動作(定量) ←→ ステディ動作(連続) |
外部入力 | 無電圧接点、又はオープンコレクタ |
外部出力 | オープンコレクタ |
チュービング方式
チュービング方式は、主に液体を送り出すチューブのほかに、チューブポンプが取り付けられた制御機器などによって構成されています。
ポンプ内にあるローターの周囲に取り付けたチューブを、ローターが回転しながら圧力をかけていき、その圧力でチューブが液体の吸い込みと押し出しを繰り返すことで、吐出部まで安定して液体を送り出し、吐出します。
容積計量方式
容積計量方式は、主に液流路内に設けた計量室内でピストンが押し出した体積分の液量を吐出する方式で、ピストンの径とピストンが動いた距離(ストローク)で、液体の吐出量が決まります。
ピストンの径とストロークによる体積で、吐出に必要な液量を確保するため、液粘度変化による吐出量のばらつきが少ない計量精度の高さが特徴です。
そのため、低粘度から高粘度までの幅広い粘度の液体を、正確に吐出することができます。
代表的な容積計量方式のポンプには、プランジャポンプやポジロードポンプなどがあります。
プランジャポンプ
プランジャポンプとは、プランジャによって液体を押し出して吐出する方式です。
IN切換弁が開くことで液体がタンクから計量室へ流入され、IN切換弁が閉じてOUT切替弁が開くタイミングで、プランジャが計量室内の液体を押し出すことで吐出されます。
【容積計量方式(プランジャポンプ)の製品例】
マイクロプランジャポンプ
容積計量方式のプランジャポンプを採用しているため少量でも高精度吐出が可能です。

IN切換弁、プランジャポンプ、OUT切換弁(先端吐出装置)をコンパクトにまとめ、一体型にしました。
コンパクトなためXYZ駆動ロボットのヘッド部への取付も可能です。
標準(常圧)タイプの他に真空注入タイプ、チェック弁タイプ(OUT切換弁なし)も用意しております。
【仕様】
標準 タイプ |
常圧カット バルブ |
真空注入 タイプ |
クリーン 仕様 |
|
吐出量範囲 | 0.0024〜0.423ml | |||
使用圧力 | 0.5MPa (ドライエア) | |||
ストローク 調整幅 |
3〜15mm | |||
出力信号 | ホーム・エンド (オートスイッチ) | |||
カット バルブ |
無 (チェック弁) |
有 | 有 | 有 |
接液部材質 | SUSボディ + PTFE・PPパッキン | PEEK | ||
駆動方式 | エアシリンダ駆動 |
※吐出量は、ピストン径により選定できます。
微少量用2液型ディスペンサ ν(ニュー)シリーズ
ナカリキッドコントロールが得意とする容積計量方式(プランジャポンプ)のフラッグシップモデルで、高精度吐出のための新機能・新機構を搭載しています。

モジュール化されたユニットで様々な樹脂に対応。高粘度液剤でもエア抜きがしやすいポンプ構造で、なかでもニューUは内部圧力を一定化することで吐出量が安定しています。
7型ワイドカラーの大画面を採用しているため、様々な情報が1画面で確認できます。
また、軽量・コンパクトなアルミ製ケースを採用しており手持ち操作も可能です。
【仕様】
吐出量範囲 | 0.036〜5ml *1 |
---|---|
適応比率範囲 | 100:100〜100:50 *2 |
使用可能粘度 | 1〜300,000mPa・s |
原料タンク | 330mlカートリッジ用タンク、2.5kg 容器用タンクから選択 |
ミキサ | スタティックミキサ |
駆動方式 | サーボモータ駆動 |
エア源 | 0.4MPa(ドライエア) |
電源・消費電力 | AC200V ・ 1.2kW |
*1 数字は理論値です。使用樹脂や作業環境などにより変動することがあります。
*2 樹脂仕様によります。上記範囲内でも使用できない樹脂もあります。
ポジロードポンプ
ポジロードポンプとは、液流路内に設けた計量室内でピストンが押し出した体積分の液量を吐出する方式です。
液体を吐出するピストン、液体の逆流を防止するチェック弁などで構成されており、タンクの下に計量部を取り付けたシンプルな構造で、液体はタンクから直接計量ポンプに送られ、正確に計量吐出されます。
【容積計量方式(ポジロードポンプ)の製品例】
ポジロード計量ポンプ50/100
独自の容積計量方式ポジロードポンプを採用し、液体の粘度変化に影響されない正確な定量吐出を実現しました。ポンプ径の選択により、広範囲な吐出量が可能です。

タンクの下に計量部を取り付けたシンプルな構造で、供給された材料液は直接計量ポンプに送られるため、無加圧で正確な計量吐出ができます。
ストローク調整ツマミで吐出量の調整ができ、吐出圧力減圧弁により吐出スピードの調整も簡単です。作業に必要なスイッチ類を操作パネルにすべて組み込んでいるので、簡単に確実な操作が可能です。
【仕様】
機種名 | 50タイプ | 100タイプ |
---|---|---|
吐出量範囲 | 0.79〜 147.23ml |
23.75〜 588.75ml |
使用可能粘度 | 1〜1,000,000mPa・s (高粘度の場合は加熱により使用可能) |
|
原料タンク | 20L (ステンレス製) |
40L (ステンレス製) |
駆動方式 | エアシリンダ駆動 | |
制御方式 | シーケンス制御 (PLC) |
|
エア源 | 0.4MPa以上 (ドライエア) |
|
電源・消費電力 | AC100V ・ 100W | |
本体重量 | 約60kg | 約100kg |

材料液の粘度変化に影響されない容積計量方式ポジロードポンプにより、高精度計量吐出が可能な少量用2液型ディスペンサです。
タッチパネルを採用したことで操作性が向上しました。コンパクト設計で使いやすく、小さな設置スペースでセットアップも簡単に行うことができ、ミキサには動作音も静かな小型高速ブラシレスモータを採用するなど、より快適な作業環境を実現しています。
【仕様】
吐出量 範囲* |
0.03〜2.0ml/shot (ポンプコンビネーションによる) |
---|---|
適応比率 範囲* |
100:100〜100:5 |
使用可能 粘度* |
1〜300,000mPa・s (高粘度の場合は加熱により使用可能) |
原料タンク | 1L・1L (ステンレス製角形タンク)の組合せ |
洗浄タンク | 10L 圧送タンク(ステンレス製) |
ミキサ | ダイナミックミキサ 又はスタティックミキサ |
駆動方式 | エアシリンダ駆動 |
制御方式 | シーケンス制御 (PLC) |
エア源 | 0.4MPa (ドライエア) |
電源・消費電力 | AC100V ・ 500W |
本体寸法 | 535(H) × 350(W) × 615(D)mm |
*数値は理論値です。使用樹脂や作業環境等により変動することがあります。
ディスペンサの代表的な吐出方法については、以下の記事でも詳しく解説しています。
ディスペンサ使用前の確認事項
ディスペンサで液体を吐出する為に、まずは吐出する液体の量や性質を把握する必要があります。
吐出する液体の粘度や性質、1液か2液か、ターゲットにはどれくらいの液体を塗布しなければならないのか、また液体の硬化時間、熱や時間による性質の変化などを確認します。
ターゲットについては塗布する液体の温度や構成により破損してしまわないかなど、材料そのものに関する注意が必要となります。
液体やターゲットに問題がないことの確認ができたら、「ディスペンサシステム」を構成します。
ディスペンサシステムは、必要量の液体をターゲットに吐出するために、計量を行うポンプ、吐出量や吐出タイミングなどの制御を行うコントローラを中核とし、その周辺にタンク・バルブ・ノズルなどを複数組み合わせて構成していきます。
このようなディスペンサシステムを構成することで、様々な種類の中から液体の性質や使用目的に合わせた吐出方法を選定することができ、吐出方法を決定することによって、ディスペンサを使用することができるのです。
おわりに
今回は、「ディスペンサ」とは何か、用途や吐出方法についてご紹介しました。
様々な液体を正確に計量し、定量の吐出を行うディスペンサは、高精度な吐出を求められる自動車部品や電子部品などの製造工場で多く用いられます。
製造業での塗布作業にお困りの方は、用途に適したディスペンサの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
ナカリキッドコントロールでは、HPにWEBショールームをご用意しており、製品デモMOVIEや製品情報などをご覧いただけます。
また、用途や液体の性質に合った最適な機種をお選びいただくためのサポートも行っています。
ディスペンサの導入をお考えの方は、ぜひナカリキッドコントロールにお気軽にご相談ください。